特別展ミイラ~「永遠の命」を求めて@科博
遅ればせながら。
2019年11月2日より東京の国立科学博物館にて特別展ミイラ~「永遠の命」を求めて~が開催されており、ここレイメバンバ博物館からはミイラ6体が参加しています。
レイメバンバ博物館収蔵のミイラは全てコンドル湖遺跡で発見されたものですが、チャチャポヤス時代のものからインカ帝国の影響を受けたチャチャポヤス‐インカ時代のものにまたがっています。特にインカ時代のミイラは、クスコなどにあったものがスペイン人によって破壊されて消失してしまっており、コンドル湖遺跡で見つかったミイラは当時のミイラ作りの過程を知る上で大変に貴重なものとなっています。
これらのミイラは研究対象としてCTスキャンにかけられ、ミイラ包みを開けないままで中の状態を調べることになっています。何が出てくるのか、楽しみですね!
レイメバンバ博物館の収蔵物は世界中の博物館に貸出されてもいます。これらはペルーの国家文化財なので貸出には文化大臣の許可が必要です。
レイメバンバ博物館は共同体の管轄で、村人を構成員とする博物館協会がNGOセントロ・マルキに運営を委託する形をとっています。貸出申請はまずセントロ・マルキに届き、それを文化省に報告して暫定的な許可を取り、その後博物館協会委員会に伝え、博物館協会員である村人を招集して貸出の旨を伝えます。文化省が承認すれば法的にはOKなのですが、セントロ・マルキは村人に対する説明責任を負っています。
その後、文化大臣によって最終的な貸出承認が下りたら輸送の手続きに入ります。輸送には美術品を専門に扱う業者を手配します。レイメバンバという超辺鄙な所にも彼らはやってきます。
彼らには文化省から指名を受けた学芸員が同行します。この学芸員は輸送先、今回のミイラ展の場合は日本まで文化財に付き添わなければなりません。学芸員は文化財の状態や温度、湿度を常にチェックし、輸送の際の影響が最小限になるように注意し、万が一の紛失・盗難にも備えます(うちのミイラはあまり心配ないのですが副葬品が多数のミイラの場合は、開封、再梱包の際に細々とした副葬品が紛失することもあるそうです)。もちろん、損傷、紛失、盗難の際の保険はちゃんとかけてあります。
梱包作業には、博物館協会委員会をはじめ、村長など村人の代表者も招待します。これも村人に対する説明責任を果たすためです。
*今回ミイラ展向けのミイラの梱包作業に私は同席することができず、写真は別の展覧会向けの梱包作業です。
輸送業者は、文化財の形に合わせた木枠の輸送箱を用意し、中に文化財の形に切り抜いたスポンジを敷き詰めます。ミイラは特にちょっとした衝撃でも皮膚が崩れたりするので、絶対に揺れないようにしなければならず、何度も設置して具合を確かめ、切り抜いたり貼り付けたりしながら調整していきます。大体うちのミイラで1体を梱包するのに3人がかりで2時間はかかります。ミイラ展向けのミイラの梱包作業は4人がかりで1日半かかりました。
梱包作業が終わると輸送のためのトラックに積み込みます。この際も細心の注意を払って固定します。輸送には覆面の警察車両が前後付きます。リマまで陸路で行くのではなく、最寄りの空港で飛行機に積み替えます。できる限り衝撃を抑えて短時間で輸送します。
リマに到着したミイラは、一旦指定の博物館で開封し、輸送による変化がないことを確認されます。そして再度封印され、ようやく輸送先、ミイラ展の場合は日本へ向かいます。
これだけ手間も時間もかかっているので、スポンサーがついているとしても、他国で開催される展覧会はそれなりに入場料がかかります。さらに言うと、興味深い展覧会が開催できるのは、それができる資本力のある国でだけ、ということです。
残念な事実ですが、ペルーでは日本で開催されたような大アンデス展や今回のミイラ展のような大規模な展覧会は開催にこぎつけるまでの資金がなく、さらに入場料を払える層が薄いため、開催が難しいです。
世界の貴重なミイラが一同に会するこの機会をお見逃しなく!
会期 2019年11月2日(土)〜2020年2月24日(月・休)
会場 国立科学博物館(東京・上野公園)〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20
開館時間 午前9時〜午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)※入場は各閉館時刻の30分前まで
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)および12月28日(土)〜1月1日(水・祝)
ただし2月17日(月)は開館
入館料 一般・大学生 1,700円
小・中・高校生 600円
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